TIPコラム

神社建築の古層としての大社造り 出雲大社と神魂神社

2023.01.30

出雲神社といえば、拝殿にある巨大なしめなわが有名である

 古代神社建築のもっとも古いかたちが、伊勢神宮の神明造りと出雲大社の大社造りです。スケールの点からいうと、後者は前者をはるかにしのいでいます。現在の社殿は、1744年に建て替えられたものですが、1248年の建替え以前、平安時代には、東大寺の大仏殿、平安宮の大極殿と並び称されているほどの巨大さを誇りました。当時の資料をもとに復元された図面等によると、高さは48メートル(16丈)に達します。スロープ状の100メートルを上っていくとようやく本殿となります。掘立柱によって支えられ、式年遷宮によって、定期な建替えを繰り返すことで、旧来のかたちを維持してきた神明造りの伊勢神宮に対して、出雲大社の構築的な神社建築のあり方は好対照となっています。

出雲神社本殿をのぞむ

 出雲大社本殿は、間取りは桁行2間、梁間2間の正方形をしており、屋根は切妻屋根です。入り口は伊勢神宮の大棟と垂直に入る平入に対して、大棟と並行に入る妻入りとなっています。特徴的なのは、入り口が北側に偏っていることで、これも古いかたちであることの証拠でもあるといわれています。また、屋根には置き千木が載っていますが、伊勢神宮では屋根の両端の屋根を葺くための垂木が突き出て交差したものとなっています。出雲大社本殿の全景を改めて見ると、屋根のつくりが堂々とした様子が印象的です。

神魂神社本殿の全景

 大社造りとして、現存するもっとも古い神社が神魂(かもす)神社です。出雲市のとなり、松江市にあります。1538年に建て替えられたものです。本殿の構成は、出雲大社本殿とほぼ同様ですが、平面が少し異なります。中からは見えないのですが、神座の位置が、出雲大社の反対側となっています。ただ、現存する出雲大社よりも古いために、大社造りの特徴をよりよく伝えていると考えられています。規模は、出雲大社より小さいものの、相対的に床の位置が高く、柱も太く、妻側の中心に立つ「宇豆柱」(うずばしら)が壁からより飛び出したかたちとなっています。神魂神社は、出雲国造(くにのみやつこ)の祖、天穂日命(あまのほひのみこと)が降臨して創建したと伝えられています。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)もここを訪れ、『知らぬ日本の面影』に記しているといいます。 (鈴木 洋美)

神魂神社本殿の細部